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スウェーデンの政治的混迷で【フィスコ・コラム】

2018/9/16 9:00 FISCO
*09:00JST スウェーデンの政治的混迷で【フィスコ・コラム】 9月9日に行われたスウェーデン議会選の歴史に残る与野党の競り合いを反映し、通貨クローナのもみあいが続いています。新政権による財政拡大の可能性でリクスバンク(中銀)の利上げ時期の後ずれに思惑が広がれば、対ユーロで最安値も視野に入ります。 議会選(一院制、定数349議席)は、どの政党も過半数に届かないハングパーラメントとなり、ロベーン首相が率いる社会民主労働党(SAP)を中心とする中道左派連合の獲得議席は144にとどまりました。それに対し、野党の中道右派連合は142議席を確保したもよう。反移民政策を掲げる極右のスウェーデン民主党(SD)は選挙前と変わらず第3党ですが、得票率の上昇で影響力を強めそうです。 もっとも、スウェーデンで最も古い政党であるSAPの退潮傾向は鮮明でした。同党は最初の社会主義政権となり、福祉モデルを定着させた国民的政党ですが、今回は議席占有率が初めて30%を割り込みました。一方、SDは国政進出を果たした2010年の総選挙で20議席を獲得し、14年の欧州議会選では49議席、そして今回は63議席と急激に勢力を拡大しており、国内政治のパワーバランスに変化が生じています。 選挙の結果を受け、スウェーデンの政治情勢は先行きが不透明になっています。今後数週間続くとみられる協議により与野党が入れ替わる可能性もあります。イスラム勢力の排除を目指すSDが与党の一角を担うことになれば、国内の保守層の愛国主義的な精神にも火をつけ、移民に寛容だった同国は逆方向に振れるでしょう。また、連立協議の難航で政治の混乱が長引けば、様々な政策にも影響を与えそうです。 最も注目されるのは、防衛政策です。ここ数年のロシアによるバルト海での軍事活動は冷戦後最大といわれ、バルト3国や北欧諸国は攻撃に危機感を募らせています。2014年2月のウクライナのクリミア半島併合が背景にあり、スウェーデンでは2010年に廃止した徴兵制を今年から復活。北大西洋条約機構(NATO)加盟は急務となっており、政権交代なら防衛費の増大は必至の情勢です。 国家の政策が変更されれば、リクスバンクの金融政策にも影響を与えます。同中銀は2011年9月に利下げに転じ、2016年2月から現在まで政策金利を史上最低の-0.50%に維持。世界でスイスの次に低い水準です。その後、消費者物価指数(CPI)は2015年終盤から回復に向かい、昨年夏にかけて大きく改善します。7月には前年比+2.2%と目標の+2.0%を上回り、金融正常化に思惑が広がりました。 しかし、インフレの伸びがいったん失速したことで、中銀の引き締めは先送りが続いています。今年7月にCPIは+2.1%に持ち直しましたが、9月6日の定例会合で、リクスバンクは利上げ時期を「今年12月か来年2月」とさらに後ずれさせました。仮に政権交代が実現すれば、財政政策の見直しも余儀なくされるでしょう。それにより成長が鈍化すれば、通貨クローナの対ユーロでの最安値が意識されそうです。 (吉池 威) 《SK》